キャメラマン木村大作さん

『北のカナリアたち』は吉永小百合さんと、若手実力派俳優たちとの共演ということもあって吉永小百合さんのファン世代ではない人たちも、多く劇場へ足を運びました。そしてキャメラマン木村大作さんが撮影したことも、木村さんの撮る映像はどんなものか。と楽しみにしています。もちろんクレジットにもどーーーーーん!と木村大作と登場しているので、キャメラマンとしての木村大作さんの存在の大きさを感じます。もちろん冬の極寒の地でのロケ現場は、大変なものがあると思いますが撮影現場の厳しさの中で、あそこまで美しい映像美を映し出すのは大キャメラマンと名高い木村さんだからこそでしょう。

名フォーカスマンの木村大作

日本映画界だけではなく、世界の名監督から「KUROSAWA」と名前が出てくるほどの偉大な映画監督の黒澤明監督は、木村さんが東宝から離れて独り立ちした後に、黒澤監督の撮影現場でピント合わせでなにかてこずることがあると、「木村大作を呼んで来い。こんなのあいつなら一発でやるよ」と冗談交じりに言うほど、黒澤監督から絶大な信頼を得ていました。そして、木村大作さんが助手として付いていた日本映画界を代表する撮影キャメラマンの宮川 一夫さんからも「日本一のフォーカスマン」つまり撮影助手と賞賛されているように、ピント合わせで超一流の腕を持つカメラマンです。

木村大作さん自身は、助手として付いていた宮川 一夫さんや斉藤孝雄さんが自分の師匠ではなく「黒澤明」と言うほどに、黒澤明監督から多くの影響を受けています。そして前述のピント合わせの腕前から分かるように、黒澤監督からも木村さんのあまりにも見事な腕前のピント合わせから「撮影助手で名前を覚えているのは大ちゃんだけ」と呼ばれるほど、絶大な信頼を得ています。

絶対にピントは外さない

撮影キャメラマンとして、世界のクロサワからもピント合わせを絶賛された木村大作さんは、もともとキャメラマンになりたいと思って映画に携わる仕事に就いたわけではないと、インタビューで語られています。東京都立蔵前工業高等学校を卒業したときに、就職試験を11社ほど受けた中で面接の態度も悪くことごとく就職試験に落ちてしまいました。就職試験に落ちたからといって、ぶらぶらしているわけにもいかず現実的に生活をしなくてはいけない。というこもあり、たまたま東宝映画会社の求人を見て応募したことがキッカケです。

その当時映画会社は人手不足ということもあって、無事に採用となりましたが木村さんは体格もよく、そして工業高校を卒業しているから機械に詳しいだろうということで、撮影助手という仕事に配属されたということですが、木村さんは当時を振り返り実際のところは機械にもなんにも詳しくなかったといいます。

そしてその当時は、もちろん現代の撮影現場で使われているキャメラと性能は大違いです。撮影した映像をその場で確認することなどできるはずもありません。撮影したものが映像として確認できるには、撮影したから数日経ってからのことです。撮影して数日経過したあとに、フィルムに取られている映像を確認しますが、その時にピントが合っていないことが判明するともちろんもう一度撮影をやり直さなくてはなりません。

もちろん再び撮影するとなると、役者に取り直しをお願いしなくてはいけませんしフィルム代も必要になりさらなる経費が必要になります。もちろん時間もかかります。当時は今と比べると、断然撮影スケジュールもハードな日程で組まれているだけではなく、公開する映画の数もとても多かったので時間のムダにもなります。撮影助手として、木村さんは「絶対にピントは外さない。」という思いで、いつもキャメラと向き合い自分自身で試行錯誤を重ねていきます。もちろん経費がかからないようにという会社のためでもなく、ムダかもしれない。。と思っても、自分自身のために地道に努力をする。そんな人間になりたいという木村さんの思いから、自分自身できっちりとピントの合う撮影ができるようにと、努力と試行錯誤を重ねていきそれが認められるようになります。

黒澤明監督からの賛辞

地道な努力をかさねていくくちに、黒澤監督から賛辞を受けるようになります。黒澤監督の『用心棒』にあるシーンですが、犬が人の手首をくわえて歩いてくるカットがありますが、このシーンを見るたびに黒澤監督は「これ、ピント合わせてるの、大ちゃんだよ。うまいね。」と周りの人に言っていたといいます。

犬が人の手首をくわえて歩いているだけという、特にそんなに褒められるものなの?!と思ってしまうかもしれませんがこのシーンは、ピントの合う範囲が狭い望遠レンズを使用しているからです。望遠レンズであれば、ピントを合わすことができる範囲がとても狭いにもかかわらず、木村さんは見事にカメラの方に向かって歩いて来る犬を、まったくぼやけることなくまさにパーフェクトに撮影しているので、どんなキャメラを使って撮影しているかを知っていだけに、黒澤監督も舌を巻く木村さんの腕前です。

地道な努力をする人でありたいと願えばこそ、真摯にキャメラと向かい続けている木村さんに、黒澤監督から評価されるようになり結果的に、木村さんはピント合わせに秀でているという評価を受けるようになります。特に黒澤明監督作品の撮影現場では、望遠レンズを使いそして助手としてもかなり厳しい撮影現場ということもあって、キャメラマンの技量が必須の厳しい現場でした。

おまけに木村さんが所属している東宝で使われていたキャメラは、口径の大きなアナモフィクレンズと、スタンダードな写真用35mmレンズと同等の口径のレンズを両手で自分の目でピン送りをするという撮影方法だったこともあって、キャメラを扱うには熟練したうえにかなりの技量が求められる技能者を撮影現場で必要としていました。特に撮影と対象となるのが、騎馬などの場合はトロッコにキャメラが撮影対象にむかっている時なども、ピッタリとフォーカスできたのが木村さんだったのです。そんなぴったりとピント合わせができる木村さんの腕前を高く評価していたために、黒澤明監督の作品にはすべて撮影助手として傘下しています。

そしてもちろん、木村さん自身も生活のため生きるために始めた映画の仕事が、やがて自分自身でも手ごたえを感じるようになり、映画制作にのめりこんでいくようになました。

映画「北のカナリアたち」のあらすじをすべて・・・

冬の美しい厳しい映像や高倉健さん×降旗コンビでも撮影を担当したキャメラマンの木村さんが、東映60周年記念作品「北のカナリアたち」で撮影を担当しています。主演は吉永小百合さん、そして若手実力派俳優が教え子として登場しますが、森山未來さんの演技には驚かされることでしょう。北海道の最北端の離島を舞台にした映像美と、原作湊かなえさんのミステリーも楽しめるとても豪華な作品になっています。